木質文化財を調べる
森林バイオマス分野

日本には、森林の恵みである木を使った仏像などの貴重な文化財がたくさんあります。材料となる木の種類を特定することは、文化財の来歴を知る手がかりや保護・修復に役立ちます。文化財を傷つけることなく樹種の同定を行う技術の開発に取り組んでいます。

木材工学研究室
倉田 洋平(専任講師)(Researchmap)

専門分野】
キーワード:光波長が木材材質に与える影響、LEDによる樹木育種、近赤外分光法による非破壊計測

【主な担当科目】
森林リモートセンシング、森林GIS、夏季演習林実習

【これから研究室を選ぶみなさんへ】
木材の性質を非破壊で測定する技術を開発し、歴史的な文化財の保護や修復に役立てています。 さらに、光の波長ごとに森林がどのように反応するかを探る「森の分光学」という新しい分野を提案し、森林の多様な形態や生態系の理解を深めています。

【研究内容の紹介】

〜研究テーマ①〜
木材の非破壊計測技術の開発と文化財保護への応用

・木材は古くから建築や工芸品に利用され、その中には歴史的・文化的価値の高いものが数多く存在します。 これらの木質文化財を保護・修復する際、材料となる木の種類(樹種)を特定することは、その来歴を知る手がかりとなり、適切な保存方法を選択する上で重要です。 しかし、従来の樹種同定法は、試料の一部を切り取るなど、文化財に損傷を与える可能性がありました。
・この問題を解決するため、近年、木材の材質や物性を非破壊的に計測する技術の開発が進められています。 特に、近赤外分光法(NIR)などの光学的手法が注目されています。 これらの技術は、木材内部の組織構造や化学成分に関する情報を取得し、樹種の特定や材質評価を可能にします。
・この非破壊計測技術の開発により、文化財を損傷することなく詳細な分析が可能となり、保存・修復の質が飛躍的に向上しました。 また、これらの技術は、木材の品質管理や建築物の診断など、他の分野への応用も期待されています。

〜研究テーマ②〜
森の分光学:光の波長と森林生態系の関係解明

・森林は地球上の生態系の中で重要な役割を果たしており、その健康状態や機能を理解することは、環境保全や持続可能な資源利用に不可欠です。 そのため、光の波長に対する樹木の反応を探求し、森林の多様な形態や生態系の理解を深める「森の分光学」という新たな研究分野を提案しました。
・この研究では、様々な波長の光を用いて樹木を育成し、細胞組織の観察を通じて成長過程の変化を把握します。 さらに、演習林での光の吸収度測定を行い、光の波長が樹木の形態形成や生態に及ぼす影響を包括的に解析します。 これにより、光環境が森林の構造や機能に与える影響を解明し、森林管理や環境モニタリングへの応用が期待されています。
・「森の分光学」は、光と森林生態系の相互作用を深く理解することで、地球環境の保全や持続可能な森林利用に貢献することを目指しています。 この新たな視点からの研究は、森林科学の発展に大きなインパクトを与えるとともに、未来の環境戦略における重要な基盤となるでしょう。