~森が生みだす新素材~
森林バイオマス分野
森林の中に含まれる成分や素材の特性を生かした材料や利用方法について研究しています。樹木学・微生物学・化学・高分子化学など多様な視点を組み合わせて、樹木由来の有効な成分を取り出すことで、樹木の構造や特性を活かした新たな資源を生み出し、森林バイオマスの有効利用をめざします。
KEYWORDS:バイオマス利用、樹木組織、細胞生物学、微生物学、細胞壁科学、木質材料学、耐候性、化学着色、木質材料学、高分子化学/有機化学

バイオマス資源化学研究室
毛利 嘉一(専任講師)(Researchmap)
【専門分野】
森林資源を有効利用するための技術について、「生物 (樹木/微生物)・細胞壁成分」の視点から研究しています。
【主な担当科目】
森林資源成分学、バイオマス利用学実験、森林資源成分学実験
【主な研究分野】
森林バイオマス/天然の木質材料の扱い方や考え方について, 4つの専門分野から研究しています.

木口 実(特任教授)(Researchmap)
【専門分野】
森林資源を有効利用するための技術について、「木材の耐候性/表面処理」を用いて研究しています。
【主な担当科目】
森林基礎化学、バイオマス資源利用学
【主な研究分野】
・木質材料学、耐候性機能解析、バイオマス利用を組み合わせることで、木材をエクステリアとして利用するためのバイオマス改質技術を研究しています。
【研究内容の紹介】
森林バイオマスの有効利用のために…
木材は、生産および加工時に必要なエネルギーが他の材料に比べ非常に少なく、さらに、化石資源とは異なり、無限に再生産が可能な材料です。木材の生産は光合成によるため、地球温暖化の原因物質といわれているCO2の吸収・長期固定にも役立ち、環境や人にもやさしいエコマテリアルです。さらに、生物材料特有の特性を熟知する必要があります。では、木材の素材としての魅力や細胞壁成分の特徴を生かした利用方法について研究しています。

〜研究テーマ①〜
細胞壁の重要成分 リグニンの微生物分解

・リグニンの化学的結合のおよそ50%を占めるβ-アリールエーテル結合を選択的に開裂可能な真菌類の微生物を発見できれば、リグニンの低分子化と有用化学成分への変換が期待できます。バイオマス資源化学研究室では、リグニンモデル化合物にβ-アリールエーテル結合により蛍光物質を付加させた蛍光アナログ基質を合成し、土壌や腐朽材等からサンプリングを行っています。
・蛍光アナログ基質を含む培地で培養することで、蛍光活性が生じればβ-アリールエーテル結合の開裂能を持つ可能性のある菌体のスクリーニングができます。これまで数千に及ぶサンプリングの結果、数サンプルにおいて高い蛍光活性が得られ、現在それらから特異的結合を開裂可能は酵素の検出及び分解活性の評価を行っています
(共同研究:日本大学、森林総合研究所など)
【主な卒論テーマ】
・微生物による特異的なリグニン分解酵素の高感度検出システムの構築
〜研究テーマ②〜
木材表面の化学改質技術

・木材をエクステリアとして利用するためのバイオマス改質技術を研究しています。
・紫外線吸収剤のグラフト処理等により木材表面の化学構造を紫外線に対して安定化させることで耐候性の向上を検討しています。また、金属塩を用いて木材成分との反応による化学着色技術により、塗料には無い自然な着色や深みのある黒色化、塗装前処理として用いて耐候性の向上等を検討しています。
・近年注目されている樹脂処理について、天然物由来の樹脂化剤であるフルフリルアルコールを用いて、例えば腐朽材の強度性能の回復や寸法安定性の向上等を目指した研究を行っています。この研究に関しては、本年度の日本木材保存協会年次大会で優秀ポスター賞(2023年)を受賞しました。
(共同研究:日本大学、森林総合研究所、玄々化学工業、越井木材など)
【主な卒論テーマ】
・表面処理技術を用いた高耐候性木材表面の創出など. etc…
〜研究テーマ③〜
遺伝子組み換え樹木を用いた森林バイオマスの解析


・環境変化に伴う樹木の木部形成や細胞壁形成のメカニズムについて研究しています。資源生産については未だ未解明な点が多いため、これらを明らかにすることで木質バイオマスの安定供給のための技術開発が飛躍的に発展することが期待できます。
・本研究室では、SCAMPL(Secretory Carrier membrane protein)やGT(Glycosyltransferase)等のプロモーターを組み込んだ遺伝子組み換え樹木を用いて、樹木細胞の組織分化や二次細胞壁形成をモニタリングする技術を活用しています。
・樹木の肥大成長や頂端分裂組織における伸長成長等の直接観察することにより、照射光波長や温湿度等の生育環境と樹木の成長過程の関係性を細胞レベルで観察しています。本研究に関する成果は、日本木材学会年次大会で優秀ポスター賞(2015年)等を受賞しています。
(共同研究:日本大学、東京農業大学など)
【主な卒論テーマ】
・遺伝子組み換え樹木を用いた木材形成過程のイメージング解析
〜研究テーマ④〜
木材乾燥と細胞壁化学成分の関係を調べる

・木材を建築材料や木材製品として使用する際、必ず「木材乾燥」が必要になります。伐採直後の生材は、水分を多量に含むことからそのまま材料としては利用できません。そのため、高温高湿度条件で木材を乾燥することによって、初めてその材料の特性を判断することができます。
・研究室のこれまでの実験では、スギ正角の木材乾燥/熱処理 (高温セット処理など) による表面割れや内部割れやできまた、さらに近年では、世界的にも人気樹種であるカラマツ材の木材乾燥に着目しています。
・本研究室では、人工乾燥時の温湿度条件における細胞壁構成化学成分の一つであるヘミセルロース化学構造に焦点を当て、木材の物性に与える影響についてそのメカニズムについて研究しています。温湿度条件を変えて処理した木材について、構成化学成分割合、ヘミセルロースの分子量変化、リグニンの逐次処理による溶脱ヘミセルロースの糖分析などを行っています。
・本研究の成果により、日本木材学会年次大会において学生優秀口頭発表賞(2021年)、優秀ポスター賞 (2023年) 等を受賞しました。
(共同研究:日本大学、森林総合研究所、九州大学など)
【主な卒論テーマ】
・木材乾燥/熱処理に伴う細胞壁構造およびヘミセルロース集積状態の変動
【研究室の特徴】
日本大学 バイオマス資源化学研究室では...
⇒ 木質バイオマス + 細胞壁科学 + 有機化学を基盤として研究しています.
特に、森林科学分野の中でも, "バイオマス利用(エネルギー/マテリアル)、有機化学/化学合成/高分子合成/化学、樹木培養技術、微生物機能によるバイオ変換"について着目しています.
森林バイオマス/木材を学ぶことは, つまりは合成高分子(プラスチックス)とは異なる振る舞い方(挙動)を解析し, 天然物の特性を理解している人材になること!!を目指しています.

