~未来の森づくり~
森林サービス分野

森林共生学研究室
園原 和夏(准教授)(Researchmap)
【主な担当科目】
森林計測学、森林GIS、森林リモートセンシング、森林計測学実習、森林航測学実習
【これから研究室を選ぶみなさんへ】
森林を調べ、現在や将来の姿を解析することが未来の森づくりにつながります。ドローン計測やフィールド調査の結果から経済性や環境に配慮した資源管理や森林保全の方法を考えます。様々な立場の人と情報を共有し連携して資源生産林や里山林の管理を進めます。
【研究内容の紹介】
〜研究テーマ①〜
森林の適材適所を考える「森林ゾーニング」

崩壊地の地形特性をGISで解析(丹沢山地)

伝統農業「木庭作」の跡地(対馬)
森林は、山地災害防止や水源かん養、木材生産など多様な機能を有しています。しかし、森林はどんな機能も高度に発揮できるわけではありません。立地条件や森林のタイプ、手入れの有無等によって発揮できる機能が異なります。森林の状態や立地条件によってまとめて区分すること、これがゾーニングです。これにより、ゾーン毎に必要な管理の計画も立てやすくなり、効果的・効率的な手入れの方法についても検討することができるのです。ゾーニングにあたってはGIS(地理情報システム)を使い、地形や自然条件の解析や新しい地図を作成します。
事例1)神奈川県丹沢山地を対象に、関東大震災で発生した山地崩壊の長期的な動向を分析。その結果、地形条件によって、崩壊地が自然に植生回復する場所と何十年と残存し続ける場所があることが明らかに。植生回復しにくい場所は土壌保全を重視した森林管理を行う場所としてゾーニングします。崩壊地の残存特性は緑化工事の必要性にとっても重要な観点です。
事例2)長崎県対馬市の里山環境は、絶滅危惧種1A指定のツシマヤマネコ保全や伝統的な焼畑農業である木庭作(こばさく)と深い関わりがあります。ヤマネコ保全や伝統農業に適した自然条件を明らかにし、地域の歴史や生物を踏まえた森林ゾーニングを検討しました。
〜研究テーマ②〜
市民団体との協働による森林保全

NPOとワークショップ開催(秦野市)

NPOと研究室の協働で森林調査(伊勢原市)
私たちは、森林保全に向けた地域住民やボランティア等の市民団体との協働に取り組んでいます。例えば、手入れの遅れた人工林の再生に焦点を当て、NPOとの協働による新たな森林管理モデルの構築を目指しています。神奈川県秦野市で活動するNPOの事例研究では、間伐後のスギ人工林における光環境と下層植生の変化を分析し、市民参加型の森林整備活動を提案しました。神奈川県伊勢原市での事例では、森林整備活動をするNPOと人工林所有者のお寺と研究室で協働し、強度間伐の実験、広葉樹の植栽による混交林化、防鹿柵の設置等に取り組みました。また、森林保全ボランティアに参加する市民の意識調査にも取り組んでいます。神奈川県藤沢市の事例では、緑地保全ボランティア研修を受講している市民を対象に自然に対する潜在的な興味・関心について分析を行い、その傾向や特徴を明らかにしました。このNPO研修には、研究室の学生とともに講師として毎年参加しています。こうした研究は、森林の多面的機能を発揮させ、地域経済の活性化や環境保全に貢献するだけでなく、森林に対する人々の関心を高め、主体的な森林管理への参加を促すことに繋がります。
〜研究テーマ③〜
街の緑、身近な緑の保全と管理に向けて
都市近郊に位置する森林や緑地の保全管理にも力を入れています。都市住民にとって身近な存在である森林は、レクリエーションや環境教育、防災など、様々な機能を発揮することが期待されます。研究では、都市近郊林の生態学的特性などを分析し、都市住民のニーズに合った森林空間のデザインや管理方法を模索しています。例えば、かつて里山林として利用されていた広葉樹二次林は現在、公園や指定緑地として残されている場合も多いでしょう。しかし、樹木が高齢化したり植生遷移が進むなど、その様相は少しずつ変化しています。神奈川県では近年、ナラ枯れ被害が拡大しました。多くの枯死木を発生させ、それらが立ち枯れたままになっている等、その影響は続いています。現在、藤沢演習林のコナラを対象に、ナラ枯れ被害の状況やその後の動向をモニタリング調査しています。公園や街の緑地として残されている広葉樹二次林の管理のために解析を進めています。最近では、街中で人工的に創出された緑、例えば街路樹や団地・集合住宅などの植栽木の活力調査や経年変化、景観の評価についても取り組んでいます。住民にとって、安全かつ健全で、親しみのある緑の創出と管理に貢献します。