~相互作用と多様性~
森林エコシステム分野

地球上の生物は互いに関わり合いながら生きています。植物を中心とした生物間の相互作用を通じて生物多様性の意味を考えます。相互作用による適応度の変化を明らかにし、自然選択の過程を理解することで、森林の生物多様性保全の考え方を身につけます。

森林生態学研究室
安部 哲人(教授)(Researchmap)

専門分野】
森林資源を守り、保全するための知識や技術について、「生物多様性」の視点から研究しています。
キーワード:保全生態学、島嶼生態学、絶滅危惧種保全、外来種対策、森林動態、攪乱、植物の繁殖戦略、送粉系

【主な担当科目】
森林生態学、造林学、森林生態学実習

【主な研究分野】
第6の大量絶滅の時代です.人類は英知を結集して生物多様性を守らなければなりません.外来種・絶滅危惧種の現況や天然林の動態を解明することで,生物多様性保全に貢献します.小笠原や沖縄やんばる,新燃岳噴火跡などの事例から世界に通じる真理を探究します。

【研究内容の紹介】

〜研究テーマ①〜
島嶼生態系保全:小笠原からの挑戦

・太平洋に浮かぶ孤島・小笠原。独自の進化を遂げた固有種たちが織りなす生態系は、まさに自然の宝庫です。しかし、その美しさの裏には、外来種という脅威が潜んでいます。競争相手の少ない環境に適応してきた固有種は、外来種に対して極めて脆弱です。
・当研究室では、小笠原をフィールドに、アカギやグリーンアノールといった外来種から原生林や送粉昆虫を守るための研究に取り組んでいます。アカギの駆除方法の開発、グリーンアノールの生態解明、送粉昆虫がいなくなった植物の繁殖戦略の解明など、多角的なアプローチで保全対策を探ります。
・小笠原での研究成果は、本土における外来種対策にも応用可能です。タイワンリスやトウネズミモチなど、身近な外来種問題の解決にも貢献できるかもしれません。小笠原の生態系保全は、地球全体の生物多様性保全につながる壮大な挑戦なのです。

〜研究テーマ②〜
絶滅危惧種保全:地味な植物に光を当てる

・絶滅の危機に瀕している生物は、必ずしも派手で目立つ種ばかりではありません。人知れずひっそりと姿を消そうとしている地味な植物たちも、生態系を構成する大切な一員です。小笠原や首都圏の孤立林に生育する、そのような地味な植物に焦点を当て、個体群の現状や生活史、共生相手との共進化過程を詳細に調査することで、保全対策を探っています。
自生地の保護だけでなく、人工繁殖や個体群復元、生息地復元まで視野に入れた、総合的な保全戦略を立案します。忘れ去られそうな小さな命にも目を向け、未来へと繋ぐ。この研究は、単なる種の保全にとどまらず、自然に対する深い愛情と責任感を育むことにも繋がっています。

〜研究テーマ③〜
森林動態研究:時を超えて森を語る

・森林は、常に変化し続けています。その変化は、一見すると緩やかで気づきにくいものですが、攪乱が起こると一気に加速することがあります。当研究室では、小笠原の原生林や新燃岳の噴火跡地、大学演習林など、攪乱の影響を受けた森林を継続的に観測し、森林や無脊椎動物群集の動態を研究しています。
・具体的には、森林での樹木の成長や枯死のパターン分析、植栽も含めた適切な森林管理手法の開発などを行っています。特に、九州地方の照葉樹林における長期的なモニタリング調査は、森林生態系の変化を捉える上で貴重なデータを提供しています。外来種の侵入や火山噴火、ナラ枯れといった攪乱が、森林の構造や機能にどのような影響を与えるのか?長期的なデータに基づいて解析することで、森の過去、現在、そして未来を読み解きます。
・森林動態の研究は、地球温暖化や気候変動といった地球規模の課題に対する理解を深める上でも重要です。森の変化を知ることは、地球の未来を考えることでもあるのです。


〜最近の卒論テーマ〜
森林生態学研究室

〜特別講義〜